偽りの結婚
――――シェ……リ…ン…
誰……?
遠くで聞こえる声。
――――シェイ……ーンッ……
焦ったような男の声がする。
そして――――――
「シェイリーンッ!目を開けろ!!」
一層大きな声で呼ばれ、意識が覚醒した。
「ごほッ……ごほ…っ…!」
何回かせき込んだ後、その男の焦ったような声に誘われ、うっすらと目を開ける。
「ラ…ルフ……」
目の前には春の暖かな太陽を背景に、今までに見たことないくらいに取り乱しているラルフが見えた。
普段の紳士的な言葉づかいはどこへやら…周りの目も気にする様子のない口調だ。
同じく水でぐっしょりと濡れているラルフの髪を見ながら、金色の髪は水にぬれても綺麗なのね…などと、どこか落ち着いている自分がいた。
「シェイリーン、大丈夫か?」
目を開けても喋ろうとしない私にもどかしさを感じたのか、やはり焦ったような声出すラルフ。
支えている腕に力が入る。