偽りの結婚



――――シェ……リ…ン…



誰……?

遠くで聞こえる声。



――――シェイ……ーンッ……


焦ったような男の声がする。





そして――――――


「シェイリーンッ!目を開けろ!!」

一層大きな声で呼ばれ、意識が覚醒した。




「ごほッ……ごほ…っ…!」

何回かせき込んだ後、その男の焦ったような声に誘われ、うっすらと目を開ける。




「ラ…ルフ……」


目の前には春の暖かな太陽を背景に、今までに見たことないくらいに取り乱しているラルフが見えた。

普段の紳士的な言葉づかいはどこへやら…周りの目も気にする様子のない口調だ。

同じく水でぐっしょりと濡れているラルフの髪を見ながら、金色の髪は水にぬれても綺麗なのね…などと、どこか落ち着いている自分がいた。





「シェイリーン、大丈夫か?」


目を開けても喋ろうとしない私にもどかしさを感じたのか、やはり焦ったような声出すラルフ。

支えている腕に力が入る。




< 120 / 561 >

この作品をシェア

pagetop