偽りの結婚
「これはご令嬢方、先程は我が妻がご迷惑をかけたようですまなかったね。お怪我はありませんでしたか?」
先程の苛立たしげな表情こそないが、感情のない声に背筋がぞっとする。
均整のとれた顔立ちが作る笑顔が拍車をかけていた。
「え、えぇ…私達は大丈夫ですわ」
ラルフの冷めた表情に、令嬢たちの声が強張る。
「突然湖に落ちてしまわれて驚きましたわ」
「シェイリーン様こそお身体は大丈夫ですか?」
ラルフの視線に居たたまれなくなったのか、矢継ぎ早に私を労るような言葉をかける令嬢たち。
ラルフの前では先程の令嬢たちも形無しね…
「そ、そうだわ!王宮でシェイリーン様の看病をさせていただけませんか?」
一人の令嬢が思いついたように胸の前で手を合わせる。
「シェイリーン様が湖に落ちたのは、私達がしっかりとシェイリーン様をお守りできなかったからですし」
「私達、責任を感じているんです。是非、お傍で看病したいですわ」
そういうことね…
令嬢たちの考えが読めた。