偽りの結婚



つまり私の看病をするという建前で王宮に入り、ラルフに近づこうと言う魂胆だろう。

けれど、彼女たちがいては逆に悪化しそうだわ。





「あの…「シェイリーンは大丈夫だ」


気持ちはありがたいが…と答えようとした声はラルフによって遮られる。


断ってくれて良かった。

ラルフが断ってくれた方が差しさわりがないもの…





「君達に任せるわけにはいかない。妻の看病は夫の仕事だろう?」


彼女たちの秘策は、くしくもラルフ本人によって実行できなかった。

ニッコリと笑い、エセ紳士の本領発揮といったところだ。

ほら、令嬢たちも「君達には任せられない」と言われたのに、ラルフの笑顔に騙されて「そうですね」なんて言っている。






「さぁ、王宮へ帰ろう」


蕩ける様な甘い笑顔と声。



ドキッ――――――


その顔は先程令嬢たちに向けられたそれと全く違う。

一体どこからそんなにも甘い声を出しているのかと言うくらいの豹変ぶりだった。

呆気にとられている間にもスタスタと歩くラルフ。



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