偽りの結婚



「濡れたまま馬車に揺られて帰ってきたからか。大丈夫なのか?」


モニカの痛々しい表情を見て、私の容体がよほど悪いのかと思ったのか、ラルフの口調も堅かった。




「大丈夫です、3日間ほど安静になされば回復しますわ」

「そうか…症状が軽いようで良かった」


どこかほっとしたようなラルフの声。

私をあのような場に連れて行ったことに責任を感じているのだろうか。




「モニ…カ……」


先程よりも声が掠れてきた。

言葉を紡ぎだす度に吐き出される息も少し熱を持っている。




「何でしょう、シェイリーン様」


私の声が聞き取りづらいのか、近くまで顔を寄せるモニカ。




「部屋…を……移してちょう…だい…」

「え?」


その言葉に反応したのはラルフだった。



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