偽りの結婚



「ここじゃ…ラルフに風邪がうつってしまうわ…」


私はともかく、ラルフが風邪をひいてしまえば大変なことになる。

騎士団の活動にも制限がかかり、何より公務に支障が出る。

妃である私よりも公務の多いラルフ。

そんなラルフのスケジュールを乱すわけにはいかなかった。

避けられるリスクは避けるにこしたことはない。



そう思ったのに……




「僕はここにいてくれてもかまわないよ」


少しも察してくれない当の本人に呆れる。




「だめ…公務で忙しいんだから……モニカ、お願い…」


これ以上ラルフを説得しても無駄だと思い、対象をモニカに変更する。

困ったように私とラルフの顔を交互に見るモニカ。

そして、言いにくそうにしながらも話す。




「そうですね、お部屋を別々になされた方が良いかもしれません」


モニカは私付きの侍女である前に王家に使える人間だ。

その王家にとって重要であるラルフを守るために動いてくれると思っていた。



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