偽りの結婚
「ありがとう。私もディランが大好きよ」
ギュッとディランの首に抱き着き微笑む。
ディランと過ごすこの時間があるからミランダやイリアの冷たい態度にも耐えられる。
「ずっと一緒にいられたらよいのに…」
ディランともっと近くにいたい。
だがミランダやイリアから反対されることは間違いないし、なにより人間と狼とでは一緒に暮らせない。
だから森に来てディランの側で本を読む。
この瞬間がとても貴重だった。
お互いに話をすることもできないけど、私はこのゆったりと流れる幸せなひと時に満足している。