偽りの結婚
「モニカ、看病をするならこの部屋でもかまわないだろう?」
まだ引きさがろうとはしないラルフ。
その様子にモニカはふわりと優しい笑みを浮かべる。
「恐れながらラルフ様、このお部屋は広くて天井が高いので余計気温が下がってしまいます。シェイリーン様のお体為にも、もっと小さなお部屋に移動された方が良いと思われます」
侍女としての的確な判断。
「…そうか、そうだな」
ラルフもモニカのもっともらしい意見を聞き、ようやく納得したようだ。
「じゃぁ、行きましょう…」
寝ていた体を起こし、早速移動しようとした時。
グイッ…――――――
不意に腕を取られたかと思えば、背中と膝の下に手を添えたラルフに一瞬のうちに抱えあげられた。
「きゃ……」
突然体が浮かび上がり、小さな悲鳴が上がる。
「ラ、ラルフ……」
「大丈夫だ。こんなに軽いのに落としたりはしない」
ふわりと微笑み、私を抱え直すラルフ。
整った顔が間近に見え、慌てて視線を逸らした。