偽りの結婚
死ぬことが一瞬頭をよぎったけれど、それでも良いと思っていた…
けれど…あの時あの力強い腕に抱かれ再び光り輝く世界に引き戻され、少しほっとしていた自分がいた。
どうでもよい存在であるラルフが自分の存在を求めてくれたとはなんて皮肉なのだろうか。
なのに、目を開けて一番にラルフを見た時、何故か涙が溢れそうになった。
眉を寄せまるで自分が苦しんでいるような瞳、必死に無事を確認しよう言葉を紡ぐ声。
そして、支える温かい腕の中、その腕の中で泣きたい衝動に駆られた。
なんであんな気持ちになったのかしら…
誰もが敵の中、ラルフだけが助けてくれたから?
それとも……
自分の気持ちが分からず必死に考えていると。
―――ガチャ……
背後で扉の開く音がした。