偽りの結婚



「っ……!!」


ビクッと体を震わせ何故か咄嗟に寝たふりをしてしまった。


な、なんで寝たふりなんか…

何もやましいことなんてなにのに。




心中ではそんなことを思っていながらも、突然の訪問者にとても焦っていた。

カーペットを歩く足音が、だんだんとベッドに近づく。


誰かしら……モニカ?

でもこんな時間に部屋に来るわけがないし…




ギシッ…とベッドが音を立て、背後のマットが沈む。

背後の人物が誰か判断がつかず身構えていると、おもむろに私の額に手をかざすその人。

温かくて大きな手。

自分の額に当てられたその手を知っている気がした。



暫くすると、ため息が一つ。

そして……




「熱はまだ下がっていないようだな…」


…ッ!……ラルフ!?


額から離れた手は頬に来た。

その手は、まるで壊れ物を扱うようだ。






< 135 / 561 >

この作品をシェア

pagetop