偽りの結婚
「っ……!!」
ビクッと体を震わせ何故か咄嗟に寝たふりをしてしまった。
な、なんで寝たふりなんか…
何もやましいことなんてなにのに。
心中ではそんなことを思っていながらも、突然の訪問者にとても焦っていた。
カーペットを歩く足音が、だんだんとベッドに近づく。
誰かしら……モニカ?
でもこんな時間に部屋に来るわけがないし…
ギシッ…とベッドが音を立て、背後のマットが沈む。
背後の人物が誰か判断がつかず身構えていると、おもむろに私の額に手をかざすその人。
温かくて大きな手。
自分の額に当てられたその手を知っている気がした。
暫くすると、ため息が一つ。
そして……
「熱はまだ下がっていないようだな…」
…ッ!……ラルフ!?
額から離れた手は頬に来た。
その手は、まるで壊れ物を扱うようだ。