偽りの結婚
「大人しく踊っていれば良いものの、しまいには自分の娘を紹介し出すから性質が悪い」
そう言って招待状に断りのサインを記しているだろうペンの音が聞こえる。
「こちらはネイル王国からの招待状で夫婦で出席を…か。しかも日程は明日だ」
ラルフが黙り、部屋が静けさを取り戻す。
「明日は無理だな。これでは体調が良くなることは考えにくい。それに、シェイリーンは人が多く集まる場所は苦手だからな」
どこか暖かさのある言葉。
こうやっていつも、私たちに来た招待を断っていたのかしら。
ラルフの配慮にありがたいと思いながらも、少し心配になった。
もし招待を受けた国よりも低い地位にあったならば、失礼にあたるだろう。
偽りの妃だとしても国の行事には参加すると約束したからには、私も文句は言ってられないわね…
その後も、書類を見てはサインをするラルフを、寝たふりをして過ごす。