偽りの結婚
お互い話をするわけでもないのに、ラルフが横にいる時間が心地よいと思ったのは気のせいだ。
しばらくすると書類にサインをする音がやむ。
「おっと…あまり長居は出来ないな。シェイリーンが起きて、僕が部屋に居たら怒られそうだ」
クスッと笑い、独り言を言うラルフ。
そうよ…一体何のために部屋を別々にしたと思っているのかしら。
貴方が来てしまっては意味がないわ…と呆れながらも、本心では全く怒ってなどいなかった。
「おやすみ、シェイリーン」
そう言って、降ってきた口づけ。
ッ………!
髪をすく手を名残惜しそうに放し、ラルフは部屋を出て行った。