偽りの結婚
そういえば、以前ラルフが私の素直に思ったことを告げられる素直さが羨ましい…と言っていた。
もし、ラルフがソフィア姫の事が好きで、自分の気持ちを告げる事ができなかったとしたら?
政略結婚をあれだけ嫌がっていたラルフだもの。
婚約と言う形でなく、普通の恋人のように自分から求婚したかったのかもしれない。
そうだとすると、今も特定の人を作らずにいることにも納得が出来る。
そうよ、ラルフとソフィア姫の結婚が実現すればきっと周囲も納得するもの。
一国の王子であるラルフとこちらもまた一国の姫であるソフィア。
どちらの家柄も申し分なく、容姿も際立っている二人が並ぶととてもお似合いなのだろう。
―――ズキッ……
胸が…苦しい……
国一美しいと評判のソフィアがラルフに寄り添う様子を浮かべた瞬間、これまでにないくらいの苦しさを感じ、胸に痛みが走る。
まるで、心臓をギュッと握りしめられたような感覚。
なんでこんな気持ちになるの?
誰もが望み誰もが納得する二人の結婚なのに…
私の心は今日の天気のように暗く沈んでいた。