偽りの結婚
いつもなら夫婦だから当たり前だ、なんて茶化すのに…
普段と違うラルフにペースを乱されている自分を感じる。
「いや、君の様子を見に来たんだよ。昨日は随分辛そうにしていたからね」
ほら、また…
胸が締め付けられる程に苦しい。
そんな言葉を投げかけないで…
「もう…平気です。薬を飲んで寝たのでだいぶん良くなりました」
ラルフの優しい声に居た堪れなくなり、下を向いてしまう。
――――ピタッ
私の言葉を信じていなかったのか、おもむろに額に手を伸ばし熱を測るラルフ。
紺碧の瞳は真剣そのもので、正面を向いた先の瞳に吸い込まれそうな感覚に陥る。
綺麗な瞳……
今なら世の令嬢たちがラルフに魅かれる気持ちがなんとなくわかる気がする。
出会ったころは分からなかったけど、ラルフは意外と優しい。