偽りの結婚



女性が羨むほど綺麗な顔立ちだが、紺碧の瞳は切れ長で男らしさがあり。

紳士的で柔らかな出で立ちにもかかわらず、体は案外がっしりとしており、やっぱり男の人なんだと思わされる。

ラルフの腕の中ではとても安心でき、温かな気持ちになれた。




「もう熱はないようだ。このまま静養していれば、明日には全快かな」


ほっと安心したような笑顔をうかべるラルフにふと思う。




ラルフは他の令嬢たちにもこんなに優しいのだろうか。

ソフィア様はとても親しい間柄だと聞いてるからきっとその中でも特別だったでしょうね…





――ツキンッ


まただわ……

何故かラルフとソフィアが寄り添っているところを頭にうかべると、どんよりと暗い気持ちが胸を支配する。




「…シェイリーン?」


自分と視線を合わせたまま苦しそうに眉を寄せる私を不思議に思ったラルフが覗き込んでくる。



「っ!」


ただでさえ近かった距離はグッと縮まり、至近距離にラルフの顔が近付く。

ラルフの瞳に魅入られるように、ぼーっとしていたが、一気に現実に引き戻された。



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