偽りの結婚



「シェイリーンがいなくなったら、僕はどうしたらいいんだ?」


あ………そっか……

ラルフの言葉の真意が見えて、黒い感情が心を支配した。

それはカモフラージュとしての私がいなくなったら困るということよね?



「そうよね。私がいなくなるとカモフラージュの役をしてくれる女性を探さなければならないものね」


自嘲気味に自分を責めるような言葉が出てくる。

こんなこと言うつもりじゃなかったのに。




――ズキッ……

先程感じた痛みとはまた異なり、抉り取られるような胸の痛みを感じる。




本当はこの痛みの理由を分かっている気がする…



ラルフから優しくされると居た堪れなくなる理由。

その力強い腕で抱きしめられるとドキドキする理由。

そして、ラルフとソフィアの事を考えると胸がもやもやとする理由。

それらが示す先は全て一つしかなかった。



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