偽りの結婚
「そろそろ帰らないと日が沈むわね」
空を見上げればまだ日はあるものの、ここは森の奥深い場所。
まだ時間はあると思って油断をしていれば痛い目を見るのだ。
いつの日か今日の日のように食料を探しに森に入ったが、思いの他森の奥深くまで入ってしまったことがあった。
帰る頃には日が沈んでいて、灯りも持たずに森に入ったために森で一夜を過ごした。
昼の温かさが嘘のように寒くなる夜の森。
灯り一つない孤独なあの夜を思って、ぶるっと身ぶるいを起こし、切り上げる決断をした。
それに…―――――
「お母様やお姉様も心配なさるだろうし帰りましょう」
そんな心にもないことを思いながら家への帰路についた。