偽りの結婚
帰宅後――――――
ふらふらと危なげな足取りで着いた先は、夫婦の寝室。
キィー……
意を決して寝室の扉を押す。
ラルフは公務で忙しいのか、まだ寝室にはいなかった。
良かった…今は会いたくない……
今ラルフを目の前にすると、押さえている気持ちが溢れそうで怖かったから。
重いため息を吐きながら、髪飾りを取る。
とめていた髪がふぁさ…と背中に流れた。
手早く夜着に着替えて、ベッドに潜り込む。
幸いその日はラルフが帰宅する前に眠りについたので、顔を合わせる事はなかった。