偽りの結婚
――カチャ、カチャ
食卓に響き渡るのはナイフとフォークの触れ合う音。
テーブルには料理長が腕をふるって作った、色鮮やかな料理が並べられていた。
香ばしい香りがただよい、普通ならそれだけで食欲は増すのだが、食が進んでいなかった。
「シェイリーン、最近食が細くなったんじゃないか?母上も心配していたぞ」
私の皿に残っている料理を見てラルフが指摘する。
「ちょっと、食欲がなくて…」
もともとそんなに食べる方でもなかったため、少し食べなくなるとこうして目立ってしまうらしい。
「それにしても食べなさすぎだ。ほとんど残しているじゃないか」
けど、本当に食事がのどを通らないの。
頭の中を支配しているのはいつもラルフとソフィアのことで…
そんなことを考えていると、胸がいっぱいになってしまって、食べる事を受け付けなくなる。