偽りの結婚
そんな理由をラルフに言うわけにもいかず、ただ一言「食べれないんです…」と返す。
「やっぱり、サロンで何かあったんじゃないのか?」
ドキッ――――
あの日以来、ラルフはこう何度も聞いてくる。
「また令嬢たちに何か言われたか?」
これもお決まりの問いかけだ。
全ては私が浮かない顔をしているのが原因なんだけど…
ふとしたときに思い出して、ふとした時にはもう顔に出ているのだ。
防ぎようがないくらいに習慣化してしまったことに、対策を講じることなどできなかった。
「貴方が心配しているようなことは何もなかったわ」
私の台詞もお決まりのものだった。
「ならなぜそんなに苦しそうな顔をしているんだい?」
笑顔をつくって話しているにもかかわらず、ラルフはいつも鋭く見破ってくる。