偽りの結婚
私の腰に添えるだけだった手に力を込めて、グッと自分の方に引きよせるラルフ。
先程の男たちに見せた警戒をベルナルドにも向けていた。
もしかしたら、それ以上の警戒を見せているかもしれない。
男たちとは違い、全くひるむ様子もなく真っ向から言葉を放つベルナルドに、焦りを感じたのは妹のアリアだった。
「あは、あはは…お兄様ったら、そんな言い回しじゃラルフ様が誤解なさるわよ」
乾いた笑い声の後に、ひきつった顔でベルナルドを窘める。
「そうか…そうだね」
アリアの必死な顔を見てベルナルドはそう答えつつも納得いっていない様子。
不自然な笑みを浮かべて口を開いた。
「もちろん“妹”としてという意味ですよ、ラルフ様」
妹という単語を強調しながら、挑発的な眼差しをラルフに向ける。
「そう言う意味だと良いがな」
悠然と響くその声は、まさに気に入らないと言っているようだ。