偽りの結婚
「それよりも腕は大丈夫かい?随分赤くなっているようだが」
家同士の間柄よりも腕の方が気になっていた様子のベルナルドは、赤くなった私の腕に手を伸ばす。
しかし、それはラルフの手によって制止される。
「いくら友人とは言え、そこまでは許さない」
友人の怪我を心配して触れるのさえ許さないなど、ラルフは意外と心の狭い男だった。
「これは私の妃だ」
まるでベルナルドに見せつけるかのように私の腰を抱き寄せる。
「ラルフ?」
不可解なラルフの行動に怪訝な顔つきをする。
確かに妃ではあるけど、私は偽りの妃だ。
そんなに気にする必要はないはず…と思っていると。
「王宮へ帰るぞ」
一言そう言うと、私の腰を抱いたまま歩きだす。
「え?あっ…」
ぼーっとしていたところ、不意を突かれたため反応が遅れる。
スタスタと歩くラルフに腰をがっちりと固定されているため、なすがままにホールの出口に足が向かう。
「ベルナルドさん、アリア、また今度」
一緒に来たラルフが帰るというなら、私に選択肢はなかった。
「シェイリーン、またいつでも来てね!待ってるわ」
笑顔で手を振るアリアと表情の硬いベルナルド。
久しぶりに会った友人たちに、別れを告げて王宮への帰路へついた。