偽りの結婚
6章 偽りと真実と
噂の姫、来国
突然、噂の姫が来国すると聞いたのは、ベルナルドさんの誕生日パーティーから1週間経った日の事だった。
あの日、王宮に帰って丁寧な手当てをしてもらったおかげで腕の腫れも引いたのだが、その日以来パーティーの時などは必ずラルフが傍を離れず、ますます過保護に磨きがかかっていた。
「え?今なんて……」
読んでいた本から目をはなし、私の驚愕した声が寝室に響く。
外はすでに真っ暗でベッドサイドの温かな灯だけが部屋を照らしていた。
「だから、明日ソフィアがモルト王国を代表して我が国を訪問しに来る、と言ったんだ」
さも何でもないことのように、呟くラルフ。
ベッドに座って本を読んでいた私の隣で、こちらもまたベッドに座り書類に目を通している。
こうして、二人でベッドにいる事が当たり前になった夜。
グレイク侯爵主催の交流会の日以前は、一人ですごすことが多かったのに。
何がきっかけとなったのだろうか…ラルフはその日を境にして、夜はほとんど寝室に帰ってくる。