偽りの結婚
髪を梳きながら、抱きしめて眠るラルフの癖にはまだドキドキとして慣れないが、ラルフへの気持ちに気付いてからは、それもまた幸せだった。
それは、終わりがあるからこそ噛みしめていた幸せで…
このときその終わりはもうすぐそこまで来ていた。
「この前はランカスター王家が招待されただろう?だから、今度はモルト王国の王族を迎える番なんだよ」
確か…国交30周年をお祝いするパーティーが開かれるからって言って招待された時だったわね。
「そうですか…ソフィア様お一人で?」
不安げで、窺うような声が寝室に響く。
「あぁ。国王と王妃は国内の公務でお忙しいようだ」
しかし依然として書類に目を向けたままのラルフは淡々と答えるのみ。
「今度はランカスター王家がもてなしをする番なのね」
「そういうことだ」
そう言って、多くの書類を挟んでいるファイルをパタリと閉じ、こちらを向く。