偽りの結婚



「しかし、ソフィアはもう何度も来ているからね。我が国の名所という名所に行き尽くしているんだよ」


ラルフはファイルをサイドボードに置き、困ったような溜息を吐く。




「じゃぁ、明日はどこへ?」


そんなにもソフィアがこの国に来ているのかと思うと、少し胸がチクリとしたが、平気を装い尋ねる。





「離宮に行こうかと思っている」

「離宮に何かあるの?」


ランカスター王家は国内の数か所に離宮を持っていることは知っていた。

公務で王宮を離れる際は、その離宮ですごすこともあったから。

けれど、離宮はあくまでも仮の住まいであって、もてなすのなら王宮の方が良いのではないかと、疑問に思った。




「いや、何かあると言うわけじゃない。丘の上に建てた離宮があるのだが、そこは夜になると星空が綺麗なんだ」


丘の上というと、郊外にある離宮ね。

多分私が行ったことない離宮だわ。




「明日はそこでソフィアをもてなそうと思っている」


ラルフは楽しそうにそう言い、ソフィアの為に計画を立てる事が楽しみなように見える。

久しぶりにソフィア様に会えるから嬉しいのよね…



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