偽りの結婚
馬車から降りてきたその姫は評判に違わぬ美しい姫だった。
肩まであるブロンドの髪は丁寧に巻かれ、長い睫毛に隠れる瞳は親友のアリアを思わせる琥珀色。
きめ細かく白い肌に、長い手足。
それはまるで人形のようで、ラルフと並べば本当にお似合いだった。
「お招きありがとうございます」
鈴が鳴るように響く声は、誰もが聞き入ってしまうほどで。
この人がラルフの想い人……
ソフィアは淡いピンクのドレスの端を持ちながら腰を折り、丁寧に挨拶をする。
やっぱり、生まれが違いすぎるわ…
王族らしく凛と背筋を伸ばして立つその立ち姿で育ちが分かるとはまさにこのことだと感じた。
「こちらこそ。あいにくの天候にもかかわらずお越しいただき感謝するよ、ソフィア」
ラルフは親しみを込めた笑顔でソフィアに接する。
それは、社交界で見せる表面だけの笑顔ではなく、親しい間柄の人にだけ見せる笑顔だった。