偽りの結婚



チクリ…と、胸の奥が痛んだ。

対するソフィアも先程見せた綺麗な笑顔とはまた違った笑みをこちらに向ける。





「ふふっここからは堅苦しい言葉はなしよ。久しぶりね、ラルフ」


ふわりと表情が和らぎ、嬉しそうに目を細める。




「あぁそうだな。僕がモルト王国に招かれて以来だからね」

「そうね、だいぶ経つわね。前みたいに遊びに来てくれないんだもの、寂しかったわ」


親しそうな口ぶりで進められる会話は、端から聞いていると本当に仲の良い恋人同士のようで。

さながら、久しぶりの逢瀬を楽しんでいるようだった…





「すまない。今は忙しくてね」


苦々しく笑いながら答えるラルフ。


嘘よ…毎日夜は帰ってくる癖に…

きっと、夜ごと王宮を抜け出していたことを知られたくないのね。



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