偽りの結婚




「本当に行かないのか?」

「…えぇ、王宮に残ります」


優しくそう聞いてくるラルフに、一瞬答えに躊躇ったが、私の意思は固かった。




「そうか…残念だな。君にもあの星空を見せたかった」

「私も…見たかったです」


こんなこと言うつもりなんてなかったのに、気付いたら呟いていた。

そんな、いつになく素直な言葉にラルフは軽く目を見開く。





「また次の機会に見に行こう」


私の頭に手をのせ、目を細めて笑うラルフ。



「はい……」


また…なんてあるのかしら。

ラルフの笑顔にドキドキと胸が高まりながらも、一方で冷静にそう思う。




「くしゅんっ…!」


仮病にもかかわらず、本当に体が震えてきた。




「見送りは良いから、もう王宮へ戻りなさい」



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