偽りの結婚
「はい」
笑顔が消えたラルフを見て、しゅんとなり、一言そう言う。
そんな私に、ククッと笑いを堪えたような声が聞こえたかと思えば…
「今日はやけに素直だな」
先程まで眉を寄せて厳しい顔をしていたラルフが破顔していた。
いつもは微笑むくらいの笑顔しかしないくせに、今目の前のラルフは少年のような笑顔をしている。
「そっ、そんなことないです。いつも通りです」
初めて見るラルフの表情に、ドキドキと胸が高まった。
ラルフの表情一つに振り回されている自分は、本当に変わったのだと思う。
「明日には戻るから大人しく待っているんだぞ」
今の私が何を言っても、ラルフにはおかしく映るらしい。
ラルフの大きな手で髪をくしゃりと撫でられると、胸が苦しいくらいに締め付けられた。