偽りの結婚
「ラルフ……っ」
気がつくと、思わず声に出してしまっていた。
ハッと気付いた時にはもう遅い。
ん?っと優しく微笑んで先を促された。
「いいえ…楽しんできて下さい」
言いかけた言葉を慌てて呑み込み、笑顔を張り付ける。
「あぁ、行ってくる」
幸運にも取り乱したことをラルフに気取られることはなかった。
そして、ラルフは馬車へ。
私は王宮へと歩を進めて行く。
私は何を言おうとしていた?
王宮への道を歩きながらドクンドクンと鼓動を打つ胸を押さえる。
あの時、私は……