偽りの結婚
王宮と書庫とをつなぐ渡り廊下まで来たところで立ち止まる。
ザァァァ―――ザァァ―――
「うそ…こんなに降っているの?」
渡り廊下から外を見て驚いた。
3時間前はポツリポツリとしか降っていなかった雨が、今や数メートル先の景色さえ見えない程に降りしきっていた。
早く本を借りて戻りましょう…
渡り廊下をタッタッと小走りで走り、書庫へ駆け込む。
「これと…これと……これ」
寝室で読む本に目星をつけ、手早く借りていく。
閲覧室のガラスが風でガタガタと押されている音がやけに大きい。
一面ガラス張りの閲覧室なので、余計に大きく聞こえるのだろうと自分を納得させる。
そう考えでもしないと怖かった。
こんなにも暗い中、蝋燭の灯り一つが頼り。
広い空間には自分一人。
そして、外は轟々と雨風がふいている。