偽りの結婚
しかし、王宮の者はほとんど離宮へと赴いてしまい、モニカも今日だけソフィアの身の回りの世話でついて行っていた。
モニカ以外の他の者をこんな夜遅くに付き合わせるわけにもいかず、一人で来てしまったのだ。
「これくらいで良いかしら…」
数冊の本を胸に抱え早々に書庫を出た。
渡り廊下に差し掛かり、再び外を見ると先程よりも雨が強くなっている気がした。
あの日と一緒……
強い雨が降る外の光景に、記憶の端にあるあの夜がフラッシュバックして、ぶるっと震える。
数冊の本と蝋燭を持って、行きよりも早い足取りで寝室に戻った。
バタン―――
勢いよく寝室のドアを開け、部屋に駆け込む。
乱れる呼吸を整えながらベッドに座る。
「本なんて読んでいる場合ではないわね。早く寝た方が良さそう…」
時間が経つ程に、あの夜と同じ条件になりつつある外の光景を見て、そう判断した。