偽りの結婚



「シェイリーンッ!」


自分の体を抱きしめるその人物が名前を呼ぶ。

いつも聞きなれているはずのその声は、混乱していた私には届かない。




「や……だれかっ……ラルフ……」


今はこの場に居るはずのない愛しい人の名前を呼び続け、腕から逃れようとジタバタ身動きをする。




「落ち着け。シェイリーン、僕だ」


マントを剥ぎ取られ、目の前にいた人物を見て瞳をあらん限り見開く。

涙で濡れる瞳越しだったので視界は歪んでいたが、自分の腕を掴んでいたは確かにラルフだった。





なん…で……?


先程とは違う涙が頬を伝った……




「ラル…フ……」


ラルフと分かった瞬間、全身の力が抜ける。

抵抗がなくなった事に安心したのか、腕を放して距離をとるラルフ。




「大丈夫か?」


私の顔を覗きながら、安心させるようにゆっくりとそう言う。

しかし、次の瞬間―――


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