偽りの結婚
「前に雷が鳴っていた時、過敏に反応してただろう?」
あぁ…あの時の反応でお見通しだったのね…
けど…それだけで来てくれたの?
離宮から王宮まで、とても離れているはずなのに。
ましてや、今は他国からの賓客を抱えている身なのに…
「けれど、これほどだとは思わなかった。何かトラウマでもあるのか?」
そう問いかけるラルフに、再びコクリと頷く。
そして、ゆっくりと話し始めた。
「森に行った時にディランと雨宿りした洞窟の目の前で雷が落ちて…「ちょっと待った!」
ラルフが話を遮る。
「そのディランって誰なんだ?」
紺碧の瞳をスッと細め、少し低い声でそう問う。
誰って…ラルフは多分人だと思っているのね。