偽りの結婚



トサッ―――


ラルフは壊れ物を扱うかのようにそっと私をベッドに下ろし、寝かせる。




「ありがとう……」


布団を掛けてくれた所で、やっと声に出してお礼を言った。




「もう本当に大丈夫だからソフィア様のところへ…」


戻って、と言いかけた所で……


ピカッ―――…バリバリッ




カーテンを閉めていなかった使用人の部屋に、容赦なく雷の光が差し込む。





「っ!!」


バッと布団を頭までかぶり雷に耐える。

今度は声を出さないよう気をつけた。

また自分が悲鳴似た声を上げれば、ラルフは優しいからここに居ると言い張るだろう。

声を出すと何となく気がまぎれるけれど、今は我慢…



「私は…大丈夫……」

「君は本当に……」


言いかけたところで本日二度目の溜め息。



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