偽りの結婚



「ほら、まだこんなに震えているじゃないか」


なんで貴方はそんなに優しいの…?

なんでよりによって貴方なの…?





「僕が傍にいる時ぐらい甘えてくれ」


ラルフの言葉に、目の奥が熱くなり瞳に涙の膜が浮かぶ。





また……

私こんなに弱かった?



ラルフの言葉一つで振り回されて。

優しくされる度に、自分が弱くなっていくのが分かる。




今にも瞳に湛えた涙が溢れそうだったが、幸か不幸かラルフに窒息しそうなほど抱きしめられているため気付かれていない。




しかし……


クイッ――――

苦しいくらいに抱きしめられていた腕を離され、顎を上に向けられる。

交差するエメラルドグリーンの瞳と紺碧の瞳。



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