偽りの結婚
「ぁっ………」
思わず声が漏れた。
そんなこと、冷静になれば分かるはずだった。
そんな私にとどめの一言。
「それなのに君はこの土砂降りの雨の中、離宮へ戻れと言うのか?」
ラルフは冗談のつもりで言ったのだろうが、私はそれどころじゃなかった。
「あの…ごめんなさい……」
私…自分の気持ちばかり優先して……
「全く…こんな時にばかり素直になって。君を責めているわけではないんだよ?」
ラルフは優しく微笑んでこちらを見つめる。
ドキンと高鳴る自分の心臓。
そして―――――――
「分かったならこっちへおいで」
手を広げて、自分の腕の中に来るように促すラルフ。
差し出された手を取るか迷いあぐねていると…
ピカッ―――バリバリ…
もう何度目かもわからない雷が落ちた。