偽りの結婚
「っ!!」
あっと思った時にはもう遅く、私は咄嗟に目の前の胸に飛び込んでしまった。
「良い子だ」
ラルフは満足そうに笑い、自分の腕の中へ来た私を抱き込む。
自分で抱きついてしまった恥ずかしさに身じろぐが、その腕はそよとも揺らぐことはなく、先程よりも力強く抱きしめられていた。
「ラ、ラルフっ!」
抗議の声を上げるも…
「言っておくが、朝まで離さないからな。まぁ…そうだな。雷が止めば離してあげてもいい」
ラルフは、少し考えた素振りを見せた後、ニヤリと意地悪な笑みを浮かべてそう言う。
「っーーー」
こんなに雨が降っていて雷が止むはずないでしょう!
絶対に確信犯だわ……
「観念して寝るんだな」
「わかりました。おやすみなさいっ!」
半ば投げやりに承諾して、布団をググっと引っ張って頭までかぶってしまう。
少しでもラルフの瞳から逃げたいと思っての行動だった。