偽りの結婚
頭上でククッと笑いを堪えたような声が聞こえ…
「おやすみ、シェイリーン」
そう言って、布団越しに頭に口づけるラルフ。
さっき何もしないって言ったのに……
先程言った事を早速違えるラルフに心の中で不満をもらしつつも、心地良い腕の中ではその不満さえも忘れる。
それに、ラルフにどう逆らっても丸めこまれるのが目に見えていたため、眠っているふりを決め込むことにした。
寝室とは比べようもないくらい狭い使用人のベッドで、ラルフに密着していると、小さく聞こえる心音。
トクン――トクン――――
布越しにラルフの心音が伝わってくる。
不思議…なんだか安心する……
いつしか、雷の音も気にならなくなっていた。
そして、ラルフの心音に合わせて段々と深い眠りに落ちる。
ラルフの優しい瞳に見つめられていたことなど露程知らず、眠りについたのだった。