偽りの結婚
そんなラルフの言葉は遠の昔に忘れ去られていた。
今や私が何度も呼びかけないと起きないまでになっていたのだ。
一向に起きないラルフに痺れを切らし、顔を上げると、そこには眉を寄せて苦しそうにしているラルフの顔があった。
口から漏れる息は熱を含んでおり、肩は荒い呼吸で僅かに上下している。
何か様子が変だ……
「っ……!」
もしかして…
瞬時にラルフの異変を察知し、ありったけの力を込めてラルフの腕の中から抜ける。
「ラルフ…っ!」
そして、先程よりも強くラルフの名を呼んだ。
「ん……」
熱いと息と共に僅かに声を上げ、堅く閉じていた目を開く。
「おはよう…シェイリーン」
ラルフは笑顔をつくって私に呼びかける。
しかし、その笑顔と声にはいつものような爽やかさはなかった。