偽りの結婚
そんなラルフに、返事を返すよりも前に額を触る。
…っ!……熱い
「ラルフ…貴方、熱があるわ」
「ん…?あぁ、そうみたいだ」
当の本人は、まるで何でもないかの如くそう言い、気にした様子はない。
しかし、ベッドから起き上がらないということは、やっぱり少なからず負担があると言うことで…
「ごめんなさい…あんなに激しい雨の中帰ってきたから、きっと風邪を引いたんだわ」
原因は明らかだった。
昨日の夜は数メートル先さえ見えないほどの大雨。
そんな中、ラルフは遠い離宮から馬を飛ばして王宮まで帰って来たのだ。
雨が降っているというだけでも寒いだろうに、馬を飛ばして風を切って走っているため、その体感温度はとても低かっただろう。
ラルフが風邪を引いたのは私のせいだわ…
「君が謝ることはないよ。僕が勝手にしたことだ」
そんな私の想いを察したのか、ラルフは私の手を取り、安心させるように言う。