偽りの結婚
「でも…ごめんなさい」
本人に許されたとしても、自分を許すことが出来ずにしゅんと項垂れる。
そんな私の様子にククッと面白そうな声が聞こえたかと思えば、ラルフが口を開く。
「君がそんなに罪悪感を感じているのなら今日は大人しく寝ているよ。幸い今日はソフィアの相手をする予定だったから公務は入れていなかったしね」
その言葉にほっと胸を撫で下ろす。
けれど一つ引っかかることがあった。
「ソフィア様たちの案内は大丈夫なのですか?」
きっとラルフがいなくなって困っていることであろう…
「あぁ。今日の予定は離宮から国内の名所をまわる予定だったんだが、これは僕じゃなくともできるしね。父上と母上が上手くやってくれているさ」
返ってきた返事は意外にも軽いもので、自分がいなくとも問題ないと言うラルフ。
確かに、お父様とお母様がいれば大丈夫だろうけれど…
きっとソフィア様は貴方と一緒にいたかったはずよ?
「多分、帰るのは夜になるだろう。夜はまたこの王宮でパーティーがあるからね」
ラルフは、ソフィアにも負けず劣らずなうんざりとした表情でそう話す。