偽りの結婚


その声のどれもが女性の声で色めき立っていた。

これほど女性に騒がれるラルフ王子を一目見たいと思って壇上を見上げるも、やはり顔ははっきり見えなかった。





「皆の者、今日は急な催しにも関わらずよく集まってくれた。この場をかりて礼を言う」


ファンファーレが鳴り止み、壇上の中央に立った国王が話し始める。





「皆の者には日々感謝しておる。この国が平和を維持できておるのも、そなたらの働きがあってこそじゃ」



民に感謝の言葉を声に出して伝えることのできる王は他の国にあるだろうか。

国王は国の情勢、他国との国交等々、公式の場で伝えるべきことを黙々と話していく。

集まった国民もただ静かに国王の言葉に耳を傾けている。

国王の人望の厚さが垣間見えるようだった。



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