偽りの結婚
「もう女性の元には通っていない」
と、ムスッとした表情をして一言呟くラルフ。
「……知っているわ」
私の声がワントーン下がる。
自分の気持ちに気付いたのよね?
ソフィア様に対する気持ちに…
だから貴方は夜出歩くこともなくなった。
「とにかく、完璧な人間などいないのです」
自分の思考が暗い考えに支配される前に、話題を戻す。
「だから、私の前では完璧なラルフ・ランカスターじゃなくても良いのよ?」
「っ!」
ふわりと微笑んだ私にラルフは息を飲む。
そして、みるみるうちに赤くなる顔。
再び目を閉じ、額を抑えていた私の手を瞼の上に持ってくる。