偽りの結婚
「なんで、君はそんなに僕の欲しい言葉をくれるんだろうな」
ラルフは全身から力が抜けたように、ベッドに深く体を沈ませた。
顔を赤く染めたのは熱のためだったのか、それとも…
「弱っているからそう聞こえるだけよ。それよりも、まずは寝てください。夜までに治るかもしれませんよ?」
ラルフの言葉に内心ドキッとしたが、言葉一つに動揺していては体が持たない。
自分の手で瞳が隠されているにも関わらず、目を逸らしてそう言う。
「………」
なかなか返ってこない返事。
「ラルフ?」
何も言わないラルフを訝しげに思い、呼びかけてみる。
そして、そっとラルフの上から手を離すと、目を開ける気配はない。
ラルフは会話の途中で寝てしまったのだ。
早くも深い眠りについたのは、日頃のハードスケジュールがラルフの体を蝕んでいたからで…
毎日公務で忙しかったものね…疲れていない方がおかしいわ。
規則正しく胸を上下させるラルフの額に触れ、しばらくの間その部屋ですごしたのだった。