偽りの結婚
「ソフィア様!」
今日はブロンドの髪を結いあげ、体のラインがくっきり見える赤い衣装に身を包んでいる。
誰もが振り返るような大人っぽい雰囲気を纏ったソフィアは、間違いなくこの会場内で一番注目されている女性だろう。
「ラルフはまだ寝ているの?」
鈴の鳴るような声で、ラルフの事を聞かれ、ドキッと心臓が嫌な心音を刻む。
「すみません、まだ体調がすぐれないみたいです」
琥珀色の瞳を真っ直ぐ見据える事ができずに答える。
ラルフがこの場にいないのは、自分のせいなだけに後ろめたい気持ちでいっぱいだった。
「シェイリーンさんが謝ることではないわ。ラルフの体が弱いのがいけないのよ」
そう言って、ラルフに可愛い悪態をつくソフィアは、大して気分を害した様子はなく…
「でも、ソフィア様が帰る日は明日ですのに…」
明日ソフィア様が帰国するまでに回復すると良いけれど。
「ラルフとは会おうと思えば会えるから良いのよ。それよりも、私はシェイリーンさんとお話がしたいわ」
ラルフの体調の話は早々に終わり、ソフィアは話を変える。