偽りの結婚
「私とですか?」
ソフィアの意外な返しに、軽く目を見開いて驚く。
「ええ。是非ラルフとの日常を聞かせてもらいたいわ」
このキラキラと期待に満ちた瞳で見つめられると、答えられない者はいるのだろうか。
きっと、ラルフと私の事が気になるのね。
私が逆の立場だったらどうだろう…
こんなに明るく振る舞っていられるだろうか。
ソフィアが明るく話す度に、私の心が痛んだ。
「普通…ですよ?ラルフは朝から夜まで公務ですし。ときどきパーティーに一緒に行くくらいです」
さも二人の間には何もないかのように淡々と話す。
「それだけ?夜は一緒なんでしょう?いつも何を話しているの?」
「ラルフはいつも夜は遅いですから、私の方が早く寝てしまいます。たまに、起きている時もありますけど、ほとんど会話はありませんよ?」
ラルフと私の間にはソフィア様が心配なさっていることは何もありません。
会話の端々に、そういう想いを込めた。