偽りの結婚
「王子を紹介しよう。…ラルフここへ」
「こんばんは皆様。今日は私の為にお集まりいただき、ありがとうございます」
低いテノールで、ホールに響く声が心地良い。
落ち着いた口調は優しく包まれているような感覚。
周りを見れば、壇上の王子にうっとりと熱い眼差しを向けていた。
声だけでもこんなに女性を虜にするのだから、容姿と家柄が完璧ときたら国中の女性がほっとかないでしょうね。
「舞踏会は私の将来の妃になる方との出会いを…とのことで父が開いたようですが、どうぞ今日は趣旨を気にせず、この時間を楽しんでいってください」
王子の言葉に壁を感じたのは私だけだろうか。
自分の妃決めの舞踏会とは思わず、舞踏会そのものを楽しんで欲しいと言っているようだった。
なんだか一線引かれたように感じたのは私だけ?