偽りの結婚
「シェイリーン?」
おろおろと挙動不審になっていれば、後ろから声をかけられ驚く。
私の名を知る人なんて少ないはずなのに…と思って振り返れば、そこには知った顔があった。
「ベルナルドさん!」
私に声をかけてきたのは、私がよく知る人と同じ色彩を持つ長身の男性だった。
赤みがかった茶髪、琥珀色の瞳。
ベルナルドと呼んだその人はアリアの兄だった。
ベルナルドは私を見つけるなり、ほっとした様子で近づいてくる。
「良かった、僕も一人なんだ。良かったら僕と一緒に踊ってくれないかい?」
「でも……」
ベルナルドの申し出に口ごもる。
「アリアはルークと行ってしまってね。一人になってしまったんだ」
舞踏会前まで喧嘩していたくせに、結局ルークと踊るのね。
他の男性にとられなくて良かったわねルーク。
アリアも社交界では人気だが、兄のベルナルドも女性を惹きつける容姿をしており、言いよる女性は後を絶たない。