偽りの結婚
「ふっ…ぁ……」
一瞬、何が起こったか分からなかった。
しかし、ひやりとした唇の感触から、これが夢でないことを証明していた。
時折口から零れ落ちる息遣い。
必死に酸素を求めて口を開く合間に零れる甘い声。
「シェイリーン、君は一体いつから“女”になった?」
唇を離し、熱っぽい声でラルフは呟く。
「誰に“女”にされた?」
耳元で囁かれた低い声に、キスの余韻に浸っていた私は反応が遅れる。
「好きな男でも出来たか?」
今度こそ届いた唸るような低い声にビクッと体が反応する。
それは、ラルフが私に初めて見せた苛立ちの色。
「私は…んんっ!」
言い終わらないうちに、再び唇を塞がれる。
まるで、答えなど聞きたくない…と言うように。
ラルフ何で苛立っているの?
好きな人なんて、貴方しかいない…
貴方は私が初めて好きになった人。
きっと…最初で最後の人。