偽りの結婚
私の髪を梳く癖はいつもだが、その瞳はいつもの余裕はなくラルフの心情を表す様に揺れていた。
「おはようございます」
掠れた声が寝室に響く。
それを聞いてラルフは眉を寄せた。
「体は大丈夫か?」
「大丈夫…です」
こちらの様子を窺うように問われた言葉に、顔を赤らめながら答える。
そして、思い出される昨夜の情事。
ラルフはやっぱり初めてじゃないわよね……
経験豊富そうだったが、私はもちろん初めて。
初めてがもたらす体への負担は想像以上で、腰はズキズキと痛いし、手はシーツをギュッと握りしめたお陰で筋肉痛のようだ。
初めてにもかかわらず散々酷使された体は全身が気だるく、鉛のように重かった。
ベッドに深く体を沈めたまま答える私の言葉を信じなかったのか、ラルフの苦しそうな表情のまま。